水泳選手と指圧マッサージ

マッサージ・指圧の目的には、筋疲労の回復、外傷・障害の予防、コンディショニングなどがあります。水泳競技はその特徴として、全身の筋肉を使った運動であること、同じ動作をくり返すことによる障害が多いことが挙げられる為、疲労の回復・障害の予防に、マッサージや指圧は有効な手段です。マッサージ・指圧の種類をおおまかに分けると、身体の末梢から中枢へ求心性に“揉み擦る”マッサージと、身体の中枢から末梢へ遠心性に“押圧する”指圧に分けられます。

水泳競技は非荷重下の水中で行う競技で、水という負荷の軽い媒体を介しての運動であるため、筋繊維が柔軟性に富む選手が多いです。したがって、その柔らかい筋繊維を痛めずにほぐしていくことが手技として求められます。その方法としては、筋繊維に対して接面積を大きくとってほぐしていく方法が効果的です。例えば、母指でほぐす場合は、母指だけでなく、母指・四指・手掌部全体を皮膚に密着せて、筋肉を手で掴むようにほぐしていくと良いでしょう。肘を使ってほぐす場合も、肘頭部だけでなく、前腕部・肘頭部全体を皮膚に密着させて、術者の前腕の筋肉を、クッションのように使って、ほぐしていく方法が良いでしょう。
また、筋繊維への負担を少なく、かつ、すばやく疲労をとりのぞく方法として、ゆっくり圧をかけ、ゆっくり圧を抜く方法(漸増・漸減)よりも、瞬間的に圧を入れ、瞬間的に圧を抜き、手数でほぐして行く方法が効果的です。

マッサージを行う部位は、選手が訴える部位を中心に行いますが、痛みの関連部位を診たり、バランスを整えるために基本的に全身のマッサージを行うのが望ましいです。筋肉の硬い部位と柔らかい部位に大きな差がある選手ほど障害を起こしやすい傾向にあるからです。

マッサージは、筋肉をほぐし、柔らかくするために行うものですが、必要以上にたくさんほぐせば良いというわけではありません。マッサージを行う強さは、目安としては、〝痛いけど気持ちがよい”強さがよいでしょう。また、同じ部位を長時間ほぐすよりも、硬い部位をほぐし、関連部位をほぐし、また硬い部位に戻りほぐす、これを繰り返し行う方がよいでしょう。その方が筋繊維に対する負担も少なく、かつ、繰り返しているうちにほぐれていく範囲も広がっていきます。

マッサージや指圧の求められる時期として、大まかに分けて、練習期・試合期・試合中があります。強度の高いトレーニングを行っている時期には、しっかり全身の疲労を抜き、より高いトレーニングができる体に仕上げること、また、疲労部位を見つけ、怪我や故障になる前に未然に防ぐこと。試合期には、筋繊維にかかる負担を少なく、かつしっかり疲労を抜くこと。試合中には、疲労感の高い部位を中心に、短時間に疲労を抜くことが求められます。例えば、レース前日に筋肉のはり(テンション)を残しておかなければならない時、試合中の予選のレースと決勝のレースの間の限られた時間に全身をほぐさなければならない時などに、あまりゆっくり、時間をかけてほぐしてしまうと、かえって筋肉を疲労させてしまうことがあります。目安としては、30分で全身をほぐせるぐらいがよいでしょう。
近年では、同じ日に複数レースに出場する選手も増えてきています。また、「疲労はとりたいが、緩みすぎないように」と要望する選手も多いです。水泳選手に対するマッサージも、「いかに短時間に、しっかり疲労をとるか」が、必要とされてきています

最後に、怪我や故障をしてしまってからマッサージや指圧を受けるのではなく、障害を未然に防ぐ為にマッサージや指圧を活用する事、また、マッサージや指圧に頼り切らず、選手自身が自分の身体の状態を知り、マッサージや指圧を上手く活用していただければと思います。